白秋には2度目の姦通事件があった!?

 北原白秋は姦通罪で捕まった最も有名な人です。エロチックな人妻にメロメロになり、人生ではじめて官能の世界にどっぷりはまりました。そのおかげで警察に拘束され、借金をして大金を慰謝料として払い釈放されました。この不倫相手が白秋の最初の妻となります。「禁断の実」のうちは美しかったのに、手に入れてしまうと輝きを失うことはよくあります。自分の家族とうまくやっていけないとわかると、白秋はあっさり妻を捨ててしまいました。

普通はそうした経験をすると、女性との付き合いには慎重になるものですが、白秋に「反省」は似合いません。最初の妻とのイザコザですっかり精神的にまいっていたはずなのに、目の前に新しい獲物がぶら下がると、あっさりその場で食べてしまいました。会ったその日にしてしまったのです。その女性が2番目の妻章子です。後に、章子は白秋にとって2度目の姦通事件の火元となります。彼女は男と消えてしまいました。

初対面が初体験の日!?

ビル

 一度目の姦通事件のときには一目惚れをしたにも関わらず、一年半も肉体関係をもたずにがまんし続けた白秋でしたが、2番目の妻とは初対面で深い仲になってしまいます。既に離婚した「元人妻」であったことに安心したのかも知れませんし、その女性は、前夫に性病をうつされ子どもを埋めない体となっていましたので、「妊娠しない」ということで互いに安心感があったからなのかも知れません。

戸口で章子に「抱いて」と言われると、白秋は性欲のまかせるままに肉欲をむさぼりました。彼の家族にとっては、それが後々まで章子を嫌う原因となります。「ふしだらな女に白秋はたぶらかされている」と考えたのです。抱いたのは、白秋自身だったのですが。

マイホーム新築パーティの席から妻は男と消えた!?

 章子と結婚してからも白秋一家は貧乏生活が続いたものの、明るい兆しも見え始めます。生活のために仕方なく書き始めた「童謡」の評判が良く、少しお金が入るようになってきました。すると贅沢をしたくなるのが人の常。彼は家を新築することにしました。マイホームは3階建ての洋館。貧乏詩人の家とは思えないほど豪華な建物です。地鎮祭には友人知人を200人ほど招待し、宴会を開きます。芸者をあげた盛大なパーティです。妻の章子も珍しく着飾って、好転しかけた人生が長続きすることを確信しているように見えました。

その姿に違和感を覚えたのは、白秋の弟鉄雄と妹の夫であった山本鼎(かなえ)。章子をつかまえて説教を始めます。「日本を代表する大変な詩人を俗物にしてしまったのはお前だ」と責めたてたのです。「貧乏はお前のせいなのに、何を良い気になっているのか」と。白秋の家族たちにとっては、章子はセックスで男をものにするいんらんな女にしか見えなかったのでしょう。そんな騒動のさなか、章子は突然消えてしまいました。招待客の一人のジャーナリストを伴って。その日のうちに、晶子はその男といい関係になってしまったのです。二度と白秋の元には戻りませんでした。

白秋は章子を「姦通罪」で訴えることもできましたが、そうはしませんでした。章子に対して憐憫(れんびん)の情をもっていたようです。一人目の妻で経験した不倫と姦通の苦しみを知っていたからかも知れません。「赤い鳥小鳥」「からたちの花」などの童謡は、こうした経験の後につくられたものです。

「赤い鳥 小鳥 なぜなぜ赤い 赤い実を食べた」

何の変哲もない歌詞のようにも思えますが、妻で苦しむのは人妻を食べたからだ、という意味に解釈することもできるかも知れません。