新興宗教から世界の裏側まで 中村文則『教団X』

 『土の中の子供』で第133回芥川賞を受賞した中村文則さん。その後も、大江健三郎賞やデイビッド・グーディス賞などの名誉ある賞を受賞しています。ドストエフスキー、カミュ、カフカから影響を受けたそうですが、この3人の名前を聞いただけでも、人間の本質に迫った重みのある作風が想像されるのではないでしょうか。

今回は、そんな中村さんの代表作のひとつである『教団X』をご紹介します。タイトルを聞いて想像するよりもずっと壮大な作品で、読み終わったあとにはずっしりと残るものがあるでしょう。

『教団X』ってどんな小説?

ビル

 "危ない組織と繋がっている"とも噂され、悪名高い新興宗教の教団、通称「X」。それとは対照的に、民間の新興宗教のように見えながら、実はある魅力的な老人のもとへ続々と人が集っただけの、名も無き団体。一見、まったく交わることのなさそうな2つの組織を、ある若い男が訪れた時から、物語が動いてゆきます。教団Xは一体、何を目的としているのか? そして、この2つの人の集まりの行方は? 読めば読むほど謎が深まり、知らぬ間に私たちの視点は国境をも超えた高みへと昇ってゆきます。

「新興宗教だから危ない」という偏見を打ち破り、人間が集まるところに渦巻くエネルギーを読み解き、そして人間という生命体としての幸福にもリーチする……。読み終えたあとは、きっとあなたも思いもよらないところへ連れられていること間違いなしです!

"新興宗教"だけじゃない!

 『教団X』と聞けば、なんとなく新興宗教を思い浮かべるかもしれませんね。実際に、新興宗教をテーマとして扱っている小説ではあります。しかし、読み進めた人は、この作品が「それだけではなかった!」というのを、みるみるうちに思い知ることでしょう。興味本位で読みたくなった方は、ぜひそのまま騙されて読んでみてください。

巧みな性描写が見どころ

 これまた『教団X』というタイトルから想像するのが難しいですが、この作品の見どころは巧みな性描写です。複数人の女性の視点から語られる、性、性、性のオンパレード! このように生き生きと性を描くにあたって、中村さんはある工夫をしているそうです。

人気お笑い芸人「オードリー」の若林さんが送る文筆系トークバラエティ番組「ご本、出しときますね?」の中で中村さんが語った、その驚くべき方法は"AVを見て気分を盛り上げてから書く"というものでした。もしかしたらあの臨場感は、こういった工夫から生まれているのかもしれませんね。

それにしても、登場人物たちの絶倫っぷりには、読んでいるこちらも驚くほどです。小説のように「自分もあれくらい元気になりたい!」という男性は、ED治療薬バイアグラの力を借りてみてはいかがでしょうか。近頃は少しコストの低いジェネリック医薬品も登場したそうですから、気になる方は専門の医療機関に問い合わせてみてください。現実の肉体で自然とあれほどのパワーを発揮するのには、さすがに無理があるでしょうからね……。

今回は、中村文則さんの『教団X』をご紹介しました。"新興宗教"というセンセーショナルなテーマを掲げながらも、読み進めてみると、実は私たちの誰もが関係している、それ以上に大きな問題とぶつかります。人によっては取っつきにくいタイトルかもしれませんが「私には関係ない!」と思わずに、騙されたと思って読んでみてください。