日本昔話のような面白さをもつ芥川龍之介の短編集

 芥川龍之介が初期に書いた作品の多くは、民話をもとにした作品であり、どれも小さいころに親が話してくれた昔話のような面白さがあります。作品自体もとても有名であり『羅生門』などは学校の教科書にのっているほどです。

ただ、古典をもとにしたものが多いせいか、昔の階位や道具の名称など、現代では使わない単語が多々出てきます。おかげで優れた文章にも関わらず読むのが大変で、面白さを理解するより先に疲れてしまう方も少なくありません。

人間心理の根本的な部分を扱った、重厚な短編の数々

ビル

 ほとんどの「名作」と呼ばれる作品は長編小説ですが、芥川龍之介は違います。彼の傑作と評されるものの多くは短編小説であり、長編はむしろ苦手な分野としており、書こうとして未完に終わった作品もいくつかあるそうです。

短編の題材は主に歴史ものやキリシタンものを取り上げ、人間の内面をするどい描写で表しました。話のテーマも「生きるための悪」や「自由」など、人が生きる上で避けて通ることができない普遍的なものばかりです。

あらゆる人々にあてはまる重要なテーマを対象にするからこそ、彼の小説は人々のこころをつかんだのかもしれません。そして時代を問わず大切なことであるからこそ、現代に生きる人間にとってもすばらしい作品であるはずです。

テーマが重過ぎる?楽しいストーリーのものを選べば苦じゃなくなる!

 テーマ自体は重苦しく、人によってはストレスを感じてしまうかもしれません。しかし全体のストーリーはユーモアにあふれています。ですから楽しむことを優先したいのなら、あまり深く考えずに文章を追っていくといいでしょう。

例えば有名な短編のひとつ『鼻』は、とてつもなく鼻の長い僧が、まわりの人々からばかにされており、嫌気がさして鼻を短くしようとするというのが話の大筋です。本作品は他人の幸福をねたみ、不幸を笑うことを題材としています。

ですが人間の心理をついたメッセージとは裏腹に、僧が自分の鼻に対してさまざまな思いを巡らせる様子に、思わず読者は笑ってしまうでしょう。他の作品にも、つい吹き出してしまうようなおかしさが散りばめられています。

まずは読みやすいものから!用語集もついているから心配はいらない

 ですから、人間心理をえぐるようなテーマばかりで嫌だ、と読まず嫌いをしていた人も、いくつか短編を読んでいくうちにきっと気に入るはずです。『鼻』『芋粥』『煙草と悪魔』などが、比較的軽いタッチで書かれておりおすすめです。

ただ、1900年はじめの作家ということもあり、文体が少しばかり古いものであるため、多少読むのが大変かもしれません。また『芋粥』などは800年半ば頃の話なので、専門用語も多く日本史をまったく知らないと辛いでしょう。

とは言え、後ろのページに用語集がついているものもあるので、意味がわからなくて読めないということにはならないはずです。もし読み辛い場合は、児童文学作品も書いているので、そちらから読んでみるのもいいかもしれません。