花村作品入門

 どんな作家にも必ず代表作と呼ばれる作品があります。しかし、花村萬月に関しては特別に代表作と呼べる作品がありません。正確には、人によって代表作であるとして推す作品が異なっています。それだけ、それぞれの作品が高い魅力を持った作家であるということができるでしょう。 ここでは、そんな花村作品の代表作をご紹介しましょう。

ゴッドブレイス物語

ビル

 花村のデビュー作がこのゴッドブレイス物語です。ストーリー的には若者のサクセスストーリーを描いた青春小説ですが、この段階ですでに花村作品の魅力である、独特な爽快感と、細やかな心理描写が描かれています。初期の花村作品のテーマである「疑似家族」というコンセプトが色濃く出ている作品の一つでもありますので、彼の作品に触れるのであれば決して外すことのできない一本であるといえるでしょう。

眠り猫

 初期花村作品の最高傑作との呼び声も高い作品です。純文学的な表現をハードボイルド小説に持ち込むという手法が完成された作品でもあります。魅力的な登場人物と、独特の世界観が見事にミックスされた作品ですので、純文学ファンとエンターテイメント文学ファンの両方が楽しむことのできる稀有な作品の一つです。

紅色の夢

 当初は「フリーズドライシスターズ」というタイトルで発表された中編小説です。初期の彼の作品としては珍しく、完全に純文学作品として仕上がっています。ファンの間では評価の別れる作品ではありますが、文学に対する彼なりの答えの一つとして外すことのできない作品です。

風転

 初期花村作品の中でも、より「疑似家族」というテーマを発展させた作品です。実際の家族や家庭を破壊してしまった人々が、家族の再生を試みるという基本ストーリーに、ハードボイルドやロードムービー的な要素を織り込んでエンターテイメント色をプラスした作品となっています。

ゲルマニウムの夜

 記念すべき芥川賞受賞作にして、彼の超大作「王国記」シリーズのプロローグとなった作品です。これより以前に書かれた「イグナシオ」の焼き直し作品です。初期の作品と、最近の作品との間の橋渡し的なポジションの作風となっています。

 多くの作品の中から、最初の一冊を選ぶのであれば、この中から選んでみてはいかがでしょう?