TVでも人気の羽田圭介が描くSMの世界『メタモルフォシス』

 作家の羽田圭介さん。第153回芥川賞の結果発表を待ちながら、なぜか白塗りの“聖飢魔Ⅱ”メイクを施し、カラオケで歌っていたあの姿が印象的でしたね。そんなキャラクターを生かし、最近ではTVに出演する機会も多くなってきました。多くの芸能人が何かとオブラートに包んで和やかな雰囲気を作る中、羽田さんの歯に衣着せぬ発言は、お茶の間で見ているこちらを、却ってホッとさせるものがあります。

今回は、そんな羽田圭介さんの『メタモルフォシス』という作品をご紹介します。これから現代作家の作品を読みたい方にオススメする1冊です。

『メタモルフォシス』ってどんな小説?

ビル

 主人公の男は、証券会社で働いているマジメなサラリーマンです。しかし、昼間はフツーに会社で働いている彼には、実は別の顔がありました。それは、とあるSMクラブに常連として通う、“ブタ野郎”! 彼は夜な夜な、ドM仲間と一緒に、女王様たちのお仕置きを愉しんでいました。しかしある日、仲間のうちでもとりわけSMの世界にのめり込んでいた1人の男が、ある事件に巻き込まれたことをきっかけに、彼の中で何かが目覚め始めたのです……。

『メタモルフォシス』は、SMを題材にした小説です。妙にストイックすぎるところがある主人公が“豚野郎”としての人生を究めようとする様は、一見面白可笑しいようで、求道者よろしく神々しくもあります。この語り手のマゾヒスティックな視点は、単にこの作品がSMを題材にしているから、と言い切れない部分がありそうです。女王様から強いられる無理難題で、やがて日常生活にも“豚野郎”が侵食する勢い。あの調教に比べたら、証券会社でのハードな業務も、所詮はお遊びです。自ら肉体の苦痛を求める求道者が、一体どんなラストを迎えるのか、ぜひあなたも読んでみてください。

ちなみに、物語中に出てくる“豚野郎”たちのように元気に遊びたい方は、医師にED治療薬のバイアグラを処方してもらうという手がありますから、試してみるといいかもしれません。最近では、ジェネリックのバイアグラも登場したので、さらに手に入りやすくなったそうです。まあ、こっそり飲んだとしても、性のプロである女王様にバレて、こっぴどくお仕置きされてしまうかもしれませんね……。

文庫版に収録されている『トーキョーの調教』は、『メタモルフォシス』の元になった作品だそうです。同じくSMを題材にした作品ですが、やはり表題作の方が読んだ人がメッセージ性を感じ取りやすく、またすっきりと洗練された印象になっています。

受賞作『スクラップ・アンド・ビルド』に通じるもの

 羽田圭介さんといえば、芥川賞受賞作である『スクラップ・アンド・ビルド』を思い浮かべる方が多いかもしれません。この2作に通じるのは、ストイックすぎる主人公です。『スクラップ・アンド・ビルド』には、転職活動をしながら筋トレに励む、これまたマジメな主人公が登場します。芥川賞をきっかけに羽田作品を読んだ方は、ぜひ合わせて『メタモルフォシス』を手に取ってみてください。

今回は、羽田圭介さんの『メタモルフォシス』をご紹介しました。これから現代作家の小説を読もうとお考えなら、TVでも話題の作家が描くSMの世界を、どうぞ堪能してみてください。