軽やかで洗練された文章が魅力の森見登美彦

 2003年に第15回ファンタジー大賞を受賞して以来、森見登美彦はそのオリジナリティあふれる文体で、本好きに愛される作品を次々と発表してきました。デビュー後も、いくつかの賞をとるなど文芸界にも認められています。

自身が青春時代を過ごした京都を舞台として描かれる物語は、どれも独自の世界観を確立した、好きなひとにはたまらないものです。もしかするとあなたにとって最高の一冊になるかもしれないので、一度読んでみてはどうでしょうか。

現実と非現実の混じり合った世界の上で描かれる大衆小説

ビル

 森見登美彦の小説は、非現実と現実を融合させた独特の世界観を、言葉たくみな文章で書きこんでいるのが特徴です。文体にはかなり癖があり、人によって好き嫌いがはっきりわかれるタイプのもので、熱狂的なファンになる人もいます。

2003年にデビュー作『太陽の塔』でファンタジー大賞を受賞した他に、本屋大賞、山本周五郎賞、日本SF大賞などをとっており、大衆文学として評価が高いようです。直木賞の候補に挙がっていることからも、実力の高さがわかります。

しかし、特筆すべきは本屋大賞に二度選ばれていることです。名だたる小説家が審査員になる賞よりも、書店員の投票によって選ばれる賞をとっているということは、彼の作品が本当に大衆の心をつかむ作品である証と言えるでしょう。

書簡形式で終始書かれた本『恋文の技術』がおすすめ!

 入門としてのおすすめは2009年3月に発売された、手紙形式で書かれた小説『恋文の技術』です。小説内のすべては手紙のやり取りという体で話が進むのですが、いい意味でばかばかしい学生の文通が味わえるので楽しめます。

また、人間関係が手紙のみで浮かび上がってくるさまは、普通の小説にはない面白さでしょう。さらに、くわしく話すとネタバレになってしまうので言えませんが、最後のどんでん返しには誰もが驚きを隠せないはずです。

くわえて他の森見登弥彦作品に比べて、主人公がさわやかに描かれているのも大きな特徴でしょう。『夜は短し歩けよ乙女』などの主人公が合わず、彼の作品を読まなくなった人でも、同作品ならば楽しめるのではないでしょうか。

人によっては少し下品に感じるかも?合わなければ他の作品を

 ただ、ふんだんにユーモラスな文章を散りばめ、面白おかしく書いてある変わりに、後の作品『ペンギン・ハイウェイ』にあるような文の美しさはありません。美しい文を読みたいという方は、別のものの方がいいでしょう。

また、『恋文の技術』は「おっぱい」という単語が作品内のいたるところに出てきています。実に200回以上使われており、それ以外にも男性特有の下ネタ表現も多々ありますので、そういったものが苦手な方は他の作品をおすすめします。