夏目漱石の処女小説『吾輩は猫である』の面白さ

 千円札にもなっている超有名な小説家、夏目漱石を知らない人はいないでしょう。特にこっけいな人物描写が魅力的な『坊っちゃん』や、明治高等遊民の利己を描いた『こゝろ』は、今も多くの人に愛されている作品です。

そしてもう一作、タイトルだけなら誰もが耳にしたことのある小説があります。猫が主人公の『吾輩は猫である』は、知名度だけなら前述の二作にも劣りませんが、はたして内容はいったいどのようなものなのでしょうか。

主人公の猫が人間社会を面白おかしく語る!?

ビル

 『吾輩は猫である』は、夏目漱石が書いたはじめての小説であり、俳句雑誌と「ホトトギス」に発表された作品です。話は「吾輩は猫である。名前はまだ無い」という書きだしではじまり、主人公の猫により人間模様が語られています。

物語は基本的に、猫である「吾輩」の視点で見た人間の様子や、他の猫のことです。しかし主人公が妙に人間くさい思考で語っているため、他の動物からの視点で見ているというよりは、舞台を眺める観客のような気分になります。

特に大きな事件もなく、大すじは坦々と進んでいきますが、書かれている人間模様が面白おかしく、思わず笑ってしまうことでしょう。また、執筆当時と現代での漢字仮名づかいの違いが楽しめるのも、ひとつの魅力です。

むかしの小説でも安心!さらに読みやすくなったものもある

 人によっては旧かな旧字体は苦手という方や、漱石独特の当て字が読みにくくて嫌だという方もいるかもしれません。ですが、現在は新かな新字体に修正したバージョンもあるので、自分に合った方を選べば大丈夫です。

さらに、漢字のほぼすべてにふりがなが振ってあるので、小中学生にも読むことが可能で、読書入門として自分の子どもに買ってあげてもいいかもしれません。普段読書をしない方でも苦もなく読み進められるでしょう。

『吾輩は猫である』は文庫にして約600ページほどもある長編です。おかげで、とてもむずかしく、頭の痛くなるぐらい高尚なものだと思っている方も少なくありません。ですが、事実はまったく異なり、誰でも読めるものです。

娯楽小説にもなる文学作品!ユニークな世界観にはまる

 軽妙な語り口や、登場人物たちを通して行われる痛快な社会風刺は、読んでいて気持ちよく、ついくすりとしてしまいます。重要な文学作品としてよく取り上げられる作品ではありますが、娯楽小説としてもとても優れたものです。

また、主人公の飼い主の野苦沙弥(ちんのくしゃみ)など、登場人物の名前もユニークなものが多く笑えます。『吾輩は猫である』が夏目漱石の好きだった落語の影響が強く出ている作品なので、当然と言えば当然かもしれません。

まとめると、有名で文学的価値が高く600ページもある作品ではありますが、内容はこっけいで面白おかしく人間模様が描かれており、娯楽としてとても読みやすいと言えるでしょう。興味があれば一度読んでみてはいかがでしょうか。